死亡との因果関係
京都地裁 平成26年10月14日判決
自保ジャーナル1941号
今回紹介する裁判例は、交通事故と死亡との因果関係について判断したものです。
今回の裁判例では、心房細動の持病を持つ被害者が、脳梗塞及び肺塞栓症を発症し、それが直接の原因となって死亡した場合に、交通事故と死亡との間に因果関係を認めるかが争点になりました。
交通事故から死亡までの経過としては、事故発生の5日前に心房細動の診断を受けていた女性が、交通事故により脳挫傷及び外傷性くも膜下出血を負い、それが原因で、心房細動の患者に対して本来投与されるべき抗凝固剤が投与できずにいたところ、脳梗塞を発症し入院し、ベッドで寝たきりの状態となったことも重なり、事故発生から6ヶ月後に肺塞栓症を発症し、それが原因で女性が死亡したというものです。
裁判所は、心房細動の患者に対する抗凝固剤の投与という治療方法に高い有用性を認めた上で、本件交通事故による外傷が原因で抗凝固剤の投与を行うことができなかった結果、脳梗塞を発症し、肺塞栓症の併発により死亡したと認定し、交通事故と女性の死亡との間に、相当因果関係が認められると判断しました。
また、その上で、女性について素因減額を認めつつも、その割合は1%とみるのが相当だと判断しました。
持病をお持ちの被害者が、持病と関連する病名が原因で死亡した場合、加害者側から、交通事故と死亡の因果関係が否定されたり、過大な素因減額を主張されることがあります。この場合には、医学的な知識に基づき、しっかりと反論していく必要があります。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。