醜状痕と逸失利益の算定
東京地裁 平成27年2月13日判決
自保ジャーナル1944号
今回は、顔面の傷跡(醜状痕)について、逸失利益が認められると判断した裁判例をご紹介します。
原告は、事故により、右手間接の機能障害につき後遺障害等級表12級6号、左膝関節痛等につき12級13号、左膝蓋骨部の手術痕につき14級5号の後遺障害が認定されたほか、前額部左下、中央、鼻根中央部に線状の後(醜状痕)が残ったものとして9級16号の後遺障害が認定され、以上を併合して8級が認定されていました。
裁判では、被告は、顔面部の醜状痕は何ら原告の仕事に影響を与えていないとして、右手間接の機能障害、左膝関節痛による逸失利益(労働能力喪失率14%)のみを主張しました。
裁判所は、傷跡(醜状痕)が目立つ位置にあること、原告が外回りの営業職であることからすると、原告の性別及び年齢を考慮しても、その業務に相当の影響を及ぼしているものと認められ、加えて、これらの影響により、人事評定が低下し、昇給において不利益が顕在化していると認定し、醜状痕を加味した逸失利益(労働能力20%)が相当であると判断しました。
醜状痕は、後遺障害等級が認定されたとしても、当然に逸失利益(将来の仕事に及ぼす影響)が認められるわけではありません。相手方から逸失利益がないと主張されることは非常に多いです。被害者としては、具体的な仕事の内容、醜状痕が与える影響、危険を丁寧に主張立証していく必要があります。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。