2015/07/14 更新高次脳機能障害
高次脳機能障害と通院付添費・将来介護費
東京地裁 平成27年3月25日判決
自保ジャーナル1945号
今回紹介する裁判例は、争点になりやすい、高次脳機能障害と通院付添費・将来介護費用について判断したものです。
今回の裁判例では、高次脳機能障害(自賠責5級2号)を残す33歳女子につき、通院付添費と将来介護費が認められるか、認められるとしてその金額はいくらとすべきか、が争点になりました。
裁判所は、各証拠や裁判におけるすべての事情を考慮して、以下のように判断しました。
- 被害者が病院を退院した後の症状の内容、推移に照らし、通院について付添の必要があったものと認め、実通院日数106日のうち、100日分について、日額2,000円の通院付添費(合計20万円)を認めました。
- 将来介護費については、「神経心理学的検査の結果は良好であり、IQの低下も認められないが、軽度の記銘力障害、コミュニケーション障害があり、食事動作、更衣動作については、ときどき声がけが必要であり、些細なことですぐ感情的になり、人混み等で過剰に反応することなどから、バスや電車に乗って1人で出かけることもあるが、1人で行動できる範囲にはなお制限があり、このような症状が将来回復する蓋然性を現時点では認めることはできない」とした上で、近親者による随時の声掛け、見守り等の介護が必要であるとして、日額1,200円を平均余命(51年)の期間の分まで認めました(合計803万2,482円)。
高次脳機能障害では、特に3級以下の等級の場合には、将来介護費が争われることが多いといえます。その場合には、脳の損傷部位から考えてどのような症状が出やすいのかを医師に確認することや、家族による日常生活状況の詳細な報告が必要となってきます。このようなポイントを抑えて、丁寧に主張立証することが重要です。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。