高次脳機能障害と自宅付添費・将来介護費
東京地裁 平成27年3月26日判決
自保ジャーナル1950号
今回紹介する裁判例は、高次脳機能障害と自宅付添費・将来介護費について判断したものです。 今回の裁判例では、高次脳機能障害(自賠責3級3号)を残す41歳男子につき、自宅付添費と将来介護費が認められるか、認められるとしてその金額はいくらとすべきか、が争点の1つになりました。
裁判所は、各証拠や裁判におけるすべての事情を考慮して、自宅付添費と将来介護費につき、以下のように判断しました。
(1)自宅付添費について
A病院を退院したときには、原告は、一応の日常生活動作をすることができたものの、高次脳機能障害による注意力の低下等や言語障害(失語症)が依然として見られ、新しい行動や作業の習得、コミュニケーションをとることが困難であり、右半身の不全麻痺のため転倒の危険もあったというのであるから、自宅内でも見守り、外出時等に看視等をする必要があったと認められる。
よって、退院日の翌日である平成23年5月21日から症状固定日である平成24年2月22日までの278日間について、1日当たり4,000円の自宅付添費を認めるのが相当である。
(2)将来介護費について
原告は、症状固定日当時において、一応の日常生活動作をすることができたものの、更衣動作、入浴動作、階段昇降及び公共交通機関の利用にはときどき介助・見守り等が必要とされ、注意力の低下等や言語障害(失語症)が依然として見られ、意思の疎通は、簡単な単語の発語によりかろうじて可能であるが、混乱や失敗も多く、新しい行動や作業の習得、コミュニケ-ションをとることも困難であり、右眼が半盲で、右半身が不全麻痺であるため転倒の危険もあったということであるから、時に看視や声掛けを要し、外出の際には送迎や付添が必要であると認められる。
このような障害の程度及び内容等に鑑み、原告の症状固定時から原告の妻が67歳になるまでの25年間は近親者による介護、それ以降の(平均寿命までの)14年間は職業介護人による介護が必要であり、近親者による介護は1日当たり3,000円、職業介護人による介護は1日当たり7,000円の将来介護費を認めるのが相当である。
【コメント】
- 自宅における付添費については、必要があれば認められますが、その必要性の判断は、一般的には、入院付添費の場合よりも厳格な判断になると言われています。そして、自宅における付添費の金額については、病院で付き添う場合に比べて、付き添う人の拘束時間などに融通性があると考えられるので、入院付添費の金額よりも低額になるという傾向があります。
- 将来の介護については、親族介護が行われている場合でも、被害者が若年者の場合などは、親族による介護を平均余命まで受け続けることを期待できる訳ではありません。介護にあたる親族の稼働可能期間までは近親者による介護の水準の金額で、それ以降は、職業介護人による介護の水準で金額を算定する例が多いといえます。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。