下肢醜状の逸失利益
横浜地裁 平成27年8月31日判決
自保ジャーナル1958号
今回紹介する裁判例は、(1)脊柱変形の逸失利益と、(2)下肢醜状の逸失利益、(3)慰謝料の金額が争点になりました。かかる争点のうち、今回は、(2)下肢醜状の逸失利益について解説致します。
本件では、20歳アルバイトの女性が、バイクに乗車し停止中、トラックに追突され、腰椎破裂骨折や下腿挫創等の障害を負い、自賠責11級脊柱変形、12級下肢醜状等の併合10級後遺障害が認定されました。裁判では、後遺障害逸失利益が争点となりました。
裁判所は、脊柱変形については、脊柱の変形は軽微なもので、寛解の可能性があるとして、逸失利益を否定しましたが、下肢醜状については、以下のような判断をしました。
下肢醜状の逸失利益についての裁判所の判断
本件女性の下肢の醜状痕(下肢前面に直径11.5cm×8.5cm大の傷痕など、大きなものであった)に関しては、女性が半ズボンの制服を着用して飲食店で接客等をしていたことに加え、症状からみて症状固定時23歳の女性である本件女性の職業選択の幅が狭められていることが認められる。
したがって、本件の下肢の醜状痕は、本件女性の終了に影響を与えるものというべきであるが、年齢の経過とともに終了への影響が変化していくものと考えられる。そこで、他の障害も考慮した上で、症状固定日から10年間については20%、次の10年間については10%、その後の10年間については5%の労働能力を喪失したものと認めるのが相当である。
【コメント】
醜状障害については、後遺障害等級が認定された場合でも、相手方保険会社から、逸失利益は認められないと主張されることが多いです。
醜状障害の逸失利益について、裁判では一般的に、「被害者の性別、年齢、職業等を考慮した上で、醜状痕の存在のために配置転換されたり、職業選択の幅が狭められるなどの形で、労働能力に直接的な影響を及ぼすおそれのある場合には、一定割合の労働能力の喪失を肯定し、逸失利益を認める」とされています。
醜状障害の逸失利益については、具体的に、どのように仕事への影響があるのかを丁寧に主張・立証することが重要になります。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。