休業損害に関する裁判例
東京地裁 平成28年3月16日判決
自保ジャーナル1975号
今回は、仕事を休んでいない生保プランナーの休業損害を、営業売上の減少等から、肯定した裁判例をご紹介します。
被害者(男性 生保プランナー)は、乗用車を運転、停止中に、乗用車に追突され、頸椎捻挫、腰椎捻挫等の傷害を負いました。
その後、被害者は、1年10か月通院し、頸椎捻挫後の頸部痛及び腰椎捻挫後の腰部痛についてそれぞれ自賠責の後遺障害等級14級9号に該当するとして併合14級が認定されました。
本件では、争点の1つとして、休業損害が争われました。
原告は、実際の営業売上減収(手数料の減少)を理由として、休業損害を請求しました。
被告は、実際の休業がなかったことや原告の収入の変動が元々大きかったことから、原告の減収と事故の関連性がないと主張していました。
裁判所は以下のとおり、判断して、休業損害の発生を肯定しました。
- 原告の生保プランナーという職業は、
- 接待や付き合い、地域活動などに参加し、交友関係を広げ、深めていく、
- 上記の活動の中から、保険に興味を持った者から、個人の場合は生活状況等の聞き取りを行い、法人の場合は経営状況等の聞き取りを行う、
- 聞き取った内容を基に、個人や法人に適した保険契約のプランを提案する、
- ランに納得してもらえれば、契約の申し込みを受けるというものである
- ①から④の保険契約の販売の流れに鑑みれば、接待等の件数が減少すれば、保険契約の販売件数や金額が減少する可能性が高い
- 本件事故前12か月に44件(1か月平均3.67件)あった接待等(①)の件数は、本件事故後8か月で10件(1か月平均1.25件)に減少し、その結果、本件事故前12か月に119件(1か月平均9.92件)あった商談(②ないし④)の件数は、本件事故後8か月で30件(1か月平均3.75件)に減少している。
- 原告は、本件事故により、接待等の件数を減少させざるを得ず、それにより商談の件数も減少し、その結果、保険契約の販売件数・金額が減少し、初年度手数料をはじめとする報酬額の減少をもたらしたと認められるから、休業損害の発生自体は肯定することが相当である。
休業損害は、事故前の収入を基礎として受傷によって休業したことによる現実の収入減として算定されますが、実際に休業がない場合、収入減がない場合などは問題になることが多いです。
本件では、原告において、生保プランナーの仕事の形態・保険の販売の流れをいちから丁寧に立証し、実査の接待や商談の減少なども指摘することで、減収が事故によるものであると認められ、休業損害の発生が肯定されました。今回、参考になる事例としてご紹介させていただきます。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。