将来介護費用の定期金賠償
札幌地裁 平成29年6月23日判決
自保ジャーナル2003号
今回は、交通事故により、脳挫傷及びびまん性軸索損傷から自賠責3級3号認定の高次脳機能障害を残した事故当時4歳男子の被害者について、後遺障害逸失利益及び将来介護費用を定期金賠償で求めた裁判例を取り上げます。
本件では、4歳男子が、市道を歩行横断中に、大型貨物車に衝突され受傷し、自賠責3級3号認定の高次機能障害の後遺症を残すことになりました。そして、加害者に対して、将来介護費用は死亡するまで毎月支払の定期金賠償を求め、後遺障害逸失利益についても就労可能となる18歳から67歳まで毎月支払を求めました。
これに対して、裁判所は以下のような判断をしました。
まず、将来介護費用については、将来にわたって完全に自立した生活を送ることができる見込みがあるとは到底認めがたく、日常生活を送る上で他人の看取や支援が必要であると認められるので将来にわたって回殿必要性があると認めました。そして、男子の自立度や生活面全般における支援の必要性に鑑みて、男子が義務教育期間中の平日は親族介護負担はないが、休日、祝日、長期休み期間は親族介護負担が増大するとして日額3,000円月額9万1,250円の介護費用を認定しました。義務教育期間終了後は、両親がともに有職者であることから、平日は職業介護として1日1万円、休日は親族介護として1日5,000円、月額25万2,083円としました。介護を中心的に担う母親が67歳になるとき以降は職業介護が中心となるので日額1万円月額30万4,166円として算定し、定期金賠償による将来介護費を認めました。
また、後遺障害逸失利益も実務上は一時金払いが多いものの、定期金賠償の算定が可能で、受傷者がそれを望んでいる場合は、定期金賠償を命ずることも可能とあるとして、18歳から67歳までを賃金センサス男子・学歴計・全労働者平均賃金529万6,8000円を基礎収入として、毎月22日限りで44万1,400円を支払う旨の定期金賠償を認めました。
【コメント】
これまでに紹介させて頂きました事例と同様に、将来介護費については、現在及び将来にわたって日常生活や仕事においてどのような支障が生じるのか、どの程度の介護や支援の必要があるのかを具体的に主張していく必要があります。
また、今回のように年齢が若い場合には、将来のことを考えて一時金よりも定期金賠償を選択されることも多いと思われます。
また、後遺障害逸失利益についても、本判例で、定期金賠償も認められると認定されました。同様に、一時金払いよりも、将来の生活のためにも定期金賠償が望ましいこともあるかと思いますので、その場合は、定期金賠償を求めていくことも可能と思われます。
(文責:弁護士 小林 義和)
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。