開店準備中43歳男子の後遺障害逸失利益について、前職等から年収240万円を基礎収入とした事例
東京地裁 平成31年3月7日判決
自保ジャーナル2049号
今回は、43歳男子の後遺障害逸失利益について、前職等を考慮して年収240万円を基礎収入とし、67歳まで14%の労働能力喪失率を認定した裁判例をご紹介します。
被害者である原告は、平成25年1月15日午前10時頃、駐車場から道路に進入した際に乗用車に衝突される事故に遭いました。
原告は、頚椎捻挫、背部挫傷、耳鳴症、左感音難聴等の傷害を負い、約3年5か月に及び通院を余儀なくされました。
原告には、自賠責12級の左耳鳴・左感音難聴、14級の背部痛の神経症状から併合12級の後遺障害が残ってしまい、被告に対し損害賠償を請求する訴訟を提起しました。
裁判所は、提出された証拠等から下記の事実を認定しました。
- 原告は平成19年から平成21年まで、有限会社に勤務し、基本給として月額37万円を支給されていた。
- 原告は平成22年から平成24年まで、株式会社に勤務し、基本給として月額40万円を支給されていた。
- 原告は平成25年に海の家を開店し、レンタル業や買い物代行業を行い、海の家の内装完成後に営業許可を得て飲食業を開始することを計画していた。また簡易宿泊所経営のため事業資金として約1000万円の融資を受けることを計画していたが、本件事故当時は無収入であった。
その結果、裁判所は下記のように判断しました。
また、海の家を開店することを予定していたほか、簡易宿泊所の経営を計画していたこと、その経営にあたっては原告が客や取引先や従業員等との会話によるコミュニケーションや肉体労働をすることを要することを考慮すると、労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間は症状固定時の45歳から67歳までの22年間とするのが相当である。
弁護士のコメント
事故当時に無収入であった場合、保険会社は休業損害や逸失利益が発生していないと争ってくることが通常です。そのため、適切な賠償を得るためには、被害者である原告が収入の見込みを立証する必要があります。
本件においては、被害者である原告の今までの職歴や計画していた事業の具体的内容を丁寧に立証し、収入の見込みを立証しました。具体的な主張立証を尽くしていくことが大事であることを再認識することとなった裁判例でした。
(文責:弁護士 根來 真一郎)
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。