死亡慰謝料について被告の前方不注意等の責任が極めて重大等の理由から合計3,100万円を認定した事例
名古屋地裁一宮支部 平成31年3月28日判決
自保ジャーナル2049号
今回は、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い死亡した9歳男子小学生について、加害者の責任が極めて重大等の理由から死亡慰謝料等を合計3,100万円と認定した裁判例を取り上げます。
本件で、被害者は、信号のない交差点の横断歩道を集団下校で歩行横断中に、左方から進行してきた加害者普通貨物車に衝突され、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い死亡するに至りました。加害者は、本件事故以前から、夢中になっていたゲームアプリを起動させたスマートフォンのディスプレイを確認するなどしながら車両を運転しており、本件事故時もゲームアプリを起動させたスマートフォンを本件車両の運転席横のシートに置き、同スマートフォンを確認するなどしながら車両を運転し、本件交差点を通過するにあたって、右前方約38.2mの本件交差点入口の横断歩道手前に被害者を含めた小学生の集団がいることを認めました。それにもかかわらず、加害者は、スマートフォンを3秒程度注視した後、同横断歩道手前2.8mに至って顔をあげたところ、上記横断歩道上にいる被害者に気づき、ブレーキをかけたが間に合わず衝突させた事故です。
加害者は、本件事件直後、直ちに運転していた本件車両から降り、被害者の様子を確認した上で、携帯電話で警察に連絡したほか、近くの酒屋に行き、救急車を呼ぶようお願いしており、道路交通法上求められる救護措置義務を果たしているのであって、死亡慰謝料等の金額を判断するにあたってはかかる事情も考慮されるべきである等と主張しました。
これに対して裁判所は、
弁護士のコメント
このように死亡慰謝料等については、事故の原因となった注意義務の内容や原因及び事故前からの加害者の認識が慰謝料算定に加味されるだけでなく、加害者がある程度の救護義務を果たしていたとしても、救護に対する態度が不誠実である等の事情があると増額される可能性があります。そのため、事故前の加害者の認識や事故時の加害者の態様だけでなく、事故後の加害者の態度等も具体的に主張して慰謝料の増額主張していくことが重要です。
(文責:弁護士 小林 義和)
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。